【歌詞考察・解釈】さユり「BANDAGE -弾き語りver.-」-誰かこの血を止めて
5thシングル「平行線(通常盤)」(2017/03/01)に収録。
大好きな曲です。
弾き語りができて声もよくて曲のメッセージ性が強い女性ボーカルは最強。
でもCDの売り方が まんまアイドルなことで有名。(本人は「自分はアイドルじゃない」と言ってるけど)
カップリング曲も名曲揃いなのに、初回限定版と通常盤で収録曲が違うの嫌すぎて本当にやめてほしかったよ…
彼女の曲はたまに「弾き語りver.」って曲名の後に書いてるものがあるけど、「BANDAGE -弾き語りver.-」ってことは弾き語りじゃないver.もあるのかな?
今のところなさそうだけれども。
でもこの曲は、弾き語りが一番曲の魅力を伝えられる気がするから、このバージョンだけでいいと思う。
1番
Aメロ
枯れ果てるくらい叫んだ 言葉の意味は知らないが
泣いてる声が聞こえた 反響した僕らのメッセージ
夢うつつの先見かねた 大人たちはエゴを孕む
褒め合いがお上手なんでしょ?
作られすぎちゃった ランゲージ
理由はハッキリしないけど、心の底から悲しい。
言葉の意味はないけど、泣いている声こそが僕らの言語で僕らが世界に伝えたい(というか伝えずにはいられない)メッセージ。
もしくは、言語が通じなくても国籍や性別が違っても、聞こえてくる泣いている声。
「夢うつつの〜」は大人になることへの絶望。
ちょうど思春期から成人へ向かう途中によくある、大人への抵抗や不信感、子どもではいられない葛藤。
変に気遣いあって、表面だけの会話が気持ち悪い。
「作られすぎじゃったランゲージ」とは「世間体や関係性を守るために、思ってもないようなことを言って褒め合っている」みたいな世間話とかお世辞のこと。
なんというか、ここらへん尾崎豊みがスゴい。
Bメロ
嫌いな人間がどんどん増えてく僕たちを
誰も責めたりすることなんかはないのに息が苦しいよ
嫌いなもの、見たくない嫌なものもが増えていく。
大人になることを誰も責めたりしないけど、おそらくこの「誰も責めたりしない」のが逆に苦しめられている。
ここで気になったのは、Aメロだと「僕ら」と言っているのに、Bメロは「僕たち」と言ってるところ。
普通は統一するはずなのに…?
サビ
ああ怖い夢を見たわ 空はひび割れ僕らは消えてく
天の果てまで落ちていってその先は
また目覚めることのない 輪廻へ
怖い夢とは、ひび割れた空の先へ落ちていったこと。
天の果てに落ちていくと言ってるけど、傍から見たら天に昇っていくように見える。
つまり、
僕らがもつ苦しみや悲しみは、空がひび割れるようなどうにもできない災害によって消されてしまう。
この残酷な現象は、連鎖していきます。
これから生まれてくる子ども達、つまり我々の次の世代もこの苦しみを経験をするだろう、と。
この曲、一人称は「僕」と比較的男性が使うことが多いですが、
「〜したわ」と言い方は、比較的女性が使うことが多い、女性語です。
関西弁でも「〜したわ」って言い方しますが、さすがにここで唐突に関西弁ではないと思う(笑)
特に深い意味なんてないんでしょーけど
この部分、別に「見たわ」じゃなくても「見たんだ」「見たよ」でもいいわけです。
ここで「見たわ」なのは、
この曲は自分たちのことを指すのに「僕」を使っているけど、一人称が「僕」ではない人達も含まれているからだと思うんです。
それに「僕ら」と「僕達」。
謎に統一感がないんですよね。
つまりこの曲は、この世に存在する “大人になることに対して苦しんでいるすべての若者の声” が集約されたもの。
2番
Aメロ
枯れ果てた僕らは言った 「言葉じゃとても伝わらない」
お願い僕を抱きしめて? 戦場だこの世はバンデージ
悲しみや苦しみは「悲しい」「苦しい」という言葉だけじゃ伝わらない。
ここで初めてタイトルである「バンデージ」が登場。
この世は戦場だから、お願いだから包帯のように傷だらけの僕らを抱きしめてほしい。
Bメロ
大好きだったあの人も怪物になっちゃって
誰かを憎んで嫌っているのにどうして 何も変わらない
この曲の歌詞で一番好きな箇所。
私は尾崎豊さんの曲あんまり聴いたことないんだけど、なんだろう…なぜか尾崎みを感じてしまう。
好きなもの→嫌いになるという過程は、本当にやるせない。
これを音楽にしてくれる人ってマジで少ないんですよね。(私が知らないだけで探したらいっぱいあるかもしれんが)
我々人間は言葉を使って意思疎通するけど、やっぱり言葉だけじゃ簡単に伝わるわけない。
サビ
ああ怖い夢を見たわ赤い果実が熟してしまって
それを飲み干しすべてを知り悟っては
悲しい現実が見え始めて
熟した果実とは、大勢の人がパッと思いつくのは禁断の果実=リンゴでしょう。
果実を口にしたことによって、何も知らなかったあの頃にはもう戻れない、苦しみはこれからも続いていくことを悟る。
ちなみに私は初めて聴いたとき、この「赤い果実」はザクロを思い浮かべました。
ほら、ザクロってなんか見た目ちょっとグロいし…
絶望を歌っている歌でリンゴはちょっとスッキリしすぎているというか綺麗すぎるというか。
「BANDAGE」の意味とは
苦しんでいる我々にとっては、この世そのものが戦場。
その戦場の上に立ち、必死で生きている人間が求めるものといえば、傷ついた身体を癒してくれる 治してくれるものでしょう。
誰か助けてほしい。この傷を治したい。
悲痛ややるせない叫びで、とにかく痛くて精神から血を流している。
バンデージ(包帯)=この血を誰か止めて
さユりさんの独特な歌い方やブレスが、より悲壮感を醸し出してる気がします。
最近のさユりさんからは、こういう叫ばずにはいられない想いみたいな曲が全然なくて寂しい…
アーティストってだんだんつまらなくなるものだけど、まだデビューしてちょっとしか経ってない!つまらなくなるの早すぎるよ!
さユりさんの心の叫びを表したような曲、待ってます。